NKSIN

NKSIN(シン)
1994年福島県生まれ
主に東京を中心に作品を発表。
NKSINは、近現代の競争主義に発生する問題、貧困、人種、セクシャリティ、格差、といった多様で混沌とした要素を取り込みそれに 対するカウンターを生み出している。彼の作品はアナログとデジタルを行き来する反復で作成されている。古典的な技法への批判とも 呼べるNKSINの作品の背景には、まず彼が14世紀以降に発展を遂げたルネサンスの古典的なマインドや技法に影響を受けている点に注 目する必要がある。美術史において「再生」として分類されるルネサンスの古典的な技法であるスフマートや遠近法と現代のアニメー ションやグラフィティを混ぜ合わせることでNKSINのハイブリットなスタイルは構成されている。彼は近現代の競争主義に疑問を抱い ており、そして自身もまたこのシステムの中の一部である皮肉的な状況への反抗心の証明としてアイロニカルな作品を生み出してい る。
NKSINの作品に描かれている”退屈な人々”、”憂鬱な人々”は彼自身に影響を与えた著名な労働者、俳優、ミュージシャン、画家など時 代の文化を作り上げてきた人々の肖像であり、そこに現代のファッション、装飾品、電子機器を描く事で過去と現代の肯定と否定を繰 り返している。この作品の中に描かれている。現代において人間性の復興という点において抑制や規制ではなく文化の構築というもの が彼は重要だと考える。NKSINの作品はそのための解剖図とも解釈できる。
時代、人種、文化などをミックスさせる彼の作風は自身がフィリピン系と日本のハーフだという事が影響している。自身が体験してき た抑圧的なバックグラウンドや自身を支えてきた物をミックスさせ芸術的活動に当てはめる事で現代の中で自身の所在を確かめ、社会 と交わりあらゆる枠組みを解体する方法として現在のスタイルを確立している。人間性の探求でありこの時代のシステムの中で、人間 性というものが何なのかを彼は考察を繰り返している。
独学でペインティングを学び、エアブラシを使い作品を制作している。フィリピンと日本の間に生まれ閉鎖的な環境(フィリピン人のハーフということで差別を受けた)でフラストレーションを抱えながら少年時代を過ごした。
また、そんな時にNKSINの心の支えとなったのが映画やアニメーションに登場するヒーロー達だった。そのヒーローたちは今もNKSINの中に大きく影響し作品にも登場する。
NKSINの独特のスプレーペイントは90年代のアメリカンアニメーションのデザインからも強い影響を受け、様々な人種を主役に当てはめ、日本のサブカルチャーと混ずる事でハイブリッドなスタイルを確立した。
現代の社会問題(人種差別・争いなど)を独自に解釈し、特に人間間の問題に対し皮肉的な視点から自身の体験や思想を芸術的活動に反映させる方法として、挑発的でありながらもユーモラスな表現をしている。NKSINの作品に登場する人物には口が付いていない作品も登場するが、人間において言葉は最大のコミュニケーションツールであり、言葉で自分の心の内側を表現するものでもあるがために、その口から出る言葉によって人を傷つけたり、災いを起こすツールでもあるということを現わしている。
NKSINが表現する子供たちは、はじめて知る情報に対して、本人を含め無知を知るという自問自答した作品でもある。肌の色・生まれた国・生活環境から人を差別する。
NKSIN作品に登場する人物の肌の色がグレーなのはそのせいか・・・
平和な世界を願う一人のアーティスト   NKSIN